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広告業界の役職と
その見極め(1)」

(2006年2月2日執筆)
 
 広告業でなくとも宣伝等の部署の窓口になる人は、たくさんのクリエイティブや広告関係の人と出会う機会も多いことと思います。では次の違いが見極められるでしょうか?
●外資系広告代理店のAE
  (アカウントエグゼクティブ)
●日本の中小規模の広告会社のAE
●デザイン等もやっている印刷会社の営業
●大手広告代理店や大手広告制作会社のCD
  (クリエイティブディレクター)
●印刷会社内のAD(アートディレクター)
●個人でアートディレクター兼デザイナー
●ハガキやシールのプリントショップのデザイナー

 違いの前に、この難解なアルファベットやカタカナの職業が何かわかる必要があります。

AE Account Executive 訳すと取引先担当責任者 営業担当者という役職になります。

CD Creative Director 制作総指揮者 責任者 制作部門のボスです。 

AD Art Director ヴィジュアル表現の責任者 撮影やデザインの進行、印刷の方式などあらゆることを仕切る人です。 さて、それぞれの役職の内容はそういったところですが、違いを見極める、例えば先に上げた
●外資系広告代理店のAEと●日本の中小規模の広告会社のAE●デザイン等もやっている印刷会社の営業の違いは何処でしょうか?

 外資系広告代理店(日本ではオグルビーやトンプソン、BBDO、TBWA、マッキャンなどの会社があります)の考え方は、成果 報酬制度や、コストや作業料金をベースにしたフィー制度になってきています。一業種一社担当で複数年の広告契約を結び、ブランド、クリエイティブ、メディア、イベントなど各部門をそれぞれの専門会社が担当します。一業種一社で複数年契約ですから、腰を据えて、クライアント企業の広告戦略を本格的にパートナーとしてしっかりと支えていきます。また、世界的規模の代理店も多いですからグローバル戦略対応にも長けています。

  ●日本の中小規模の広告会社は、手数料制度、ワンストップ型、大手代理店のメディア買い占め、他業種複数企業の広告を奪い合う状況、「お得意さま至上主義」という事になります。ワンストップで、イベントものぼりもメディアもチラシの制作も窓口は、代理店AのAEの●●君。実際に担当するのは傘下の制作プロダクションや、●●君の個人ブレーンですが、その請求に全部代理店マージンを上乗せします。それでいて複数年契約をしませんから、毎回数社競合のプレゼンテーションで、「仕事を獲得するため」の働きかけが各社主流になってきます。

  ●印刷会社の営業はAEとはよばれません。普通に営業です。印刷業は、歴史も古く「お客様の原稿をお預かりして、それを印刷して納品する」という製造業者の体質が続いています。料金的には、製造業ですから仕入れ値やロットの確保などで、うまくダンピングしている業者も多いです。「お得意さま至上」というより「お得意さまの意見に100%従う」と、ちょっと聞こえはよく無いのですが丁稚奉公的なスタンスが、多くの会社に未だ残っています。

  この複雑な違い、AEと英語で言っても、どの担当も日本人の営業マンですから、見極められないかもしれません。 やはり会社、業界の体質からくる行動や方策を予測できないと自社の望む対応をしてくれる企業か「頼んでみなければわからない」という事になってしまいます。 例えば、新店舗をオープンするにあたり、いままでにない分野に進出するので、ひとまず告知パンフレットを作りたいが、当たるかどうか、どう展開すれば良いか?等いろいろ知恵を借りたいというシーンが合ったとしましょう。

  外資系の代理店は、まず広告代理店契約を結ぶことになるでしょう。その上で、テスト用のキャンペーンなどを実施し、その結果 をもとにした具体的な戦略を立案してくることでしょう。また、ブランド構築やイベント開催など、ともなっていろいろ問い合わせると、それぞれの専門家が対応するでしょう。しかし、お金はかかるかもしれません。外資系代理店は、外資系の企業と契約を結ぶことが多いのが現状です。日本の従来風土にはまだ溶け込んではいないのでしょう。

 日本の代理店は、「パンフレットの仕事があるよ」と4社でも5社でも声をかけると、各社プレゼンテーションしにくるでしょう。「イベントもおまかせください」「ブランド構築もおまかせください」と息巻きます。しかし大手広告代理店ならいざしらず、中小で「なんでもやります」ワンストップ対応は限度があると考える方が正しい見方かもしれません。それでも各営業「おまかせください、是非我が社にお仕事ください」ときますし、契約書なども出してきませんから、簡単なもの1本試しにプレゼン提案お願いすると、「お客様のお好みの色でつくりました」という、裏を返せば「あなたに気に入られて仕事が欲しい」というようなアプローチになってしまっています。 それは、もちろん極端な例としての事で、日本の代理店もしっかり、目的や効果 を見据えて案出しして、選ぶ方もそこを見て成功しそうなものを選ぶのが普通 ですが、状況的に単発で「四社の中から一社のみ」では、仕事が欲しい営業マンは、「まずは案件獲得」という考えがおこっても仕方ありません。結果 、じっくり腰を据えた提案よりも、お客様の好きそうなもの、通 りそうなものを優先的に提案します。お客様がオリエンテーションで「からすは赤いよね」と言えば、「赤いカラス」を出してきます。「検証した結果 、黒とでております。ですから、こう考えました〜」とはいきません。本当は黒なんていったら、他社の赤カラスに仕事を取られて、一文無しになるかもしれませんから。ただ、「なんでもやります、お仕事ください」という姿勢は、頼む時には便利かもしれません。いろいろ痒いところにも手を届けてくれるかも知れませんし。

 「担当営業を飛ばして、自分がその先のプロダクションにだせば、マージンカットできて良いのでは?」という考えは多くの人が思うところでしょうが、代理店のAE(担当営業)が有能な人脈やプロデュース能力、知識を持っていた場合、いわゆる「間とばし」すると大変な目にあうでしょう。「クリエイティブとの折衝はこんなに大変なのか」 「特殊なケースで断られて誰に頼んでいいかわからない」「融通聞いてもらえるやり方を知らない」「知識不足で突き返された」となって広告コストはカットできても、時間と労力、場合によっては人的コストが増加してしまうでしょう。しかし、代理店AEがもともと無能だったり、プロダクションの担当がプロデュース機能をもった人材ならばその限りではありません。一言いったら、それでキチンと多大な仕事を運営してくれる代理店AEはお得と言うことです。

  印刷会社に頼むと、まずイベントなどは大手を除いて取扱品目では無いので請けないかも知れません。そして「パンフレットの原稿をください」と営業がいってくるでしょう。あなたが仕方なく慌てて作ったテキスト原稿「ついに新点鋪オープン」となっていたら、その誤植通 りの文字で割り付けてもってくるかも知れません。そしてこう言うでしょう。「原稿の誤植は、お客様の責任です。我々はタッチしていません。割り付けただけです」誤植をそのままというのは、さすがに極端な凡例ですが、考え方としてはこういったものなのです。 ですから代理店のように「設置場所を考え、こういうキャッチコピーなら、ターゲット層に響きます」と言葉を触って提案してくれることはありません。「頂いたものはさわらず、そのままに刷る」という感覚です。その分デザインフィーは無料サービスなど強烈な値下げをしている会社もありますが、「パンフレットで反応を取りたい」と考えてるなら、「ただ、割り付けて印刷物にしました」ではアドバイザー役は無理です。(色や紙に関しては別 ですが)逆に自分でとことん考えて、これだ!という企画が出来、あとは割り付けて刷るだけならコスト削減に繋がるでしょう。

  結局は、予算と発注者の知識や能力、案件の力の入れ具合でどこに頼むかを決めることになると思いますが、よい企画やクリエイティブは、やはり契約して一社に頼む方がじっくりテストを繰り返して作り提案してくれるでしょうが、契約先が得意先かけもちしていてじっくり作れない場合はこの限りではありません。プレゼンテーションは無料の場合も多く、身銭でどこまでがんばれるかは、みなさん自分が手掛ける立場になれば直ぐわかります。各社各様の社内体制ですが、自社に合わせて、うまく使い分けが賢いやり方でしょう。 長くなってきますので、クリエイティブ業の役職については次回になります。


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