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意見の出し方」 
意見は勉強!?

(2005年11月28日執筆)
 
 今回は、ブレスト(ブレーンストーミング)から侃々諤々の製作現場での意見のぶつかり合いについて書いていきます。

 クリエイティブ事務所では、特に会議テーブルの方面 からいろいろな声が飛び交ってきます。「それは、どういう理由で?」「言ってることはわかるけど、具体化できる?」「この場合の撮影はどうするの?」「うーん、こういったアプローチはよくあるんだよね」「クライアントの事情って何なの?」「これはマッチしないよ!」

 こういった返答が自信のアイディアに対して返ってきます。時には感情がぶつかり合ってトイレの壁を殴っている人も出てくるかもしれません。ジャッジメントするのは、CD(クリエイティブディレクター)やAD(アートディレクター)で、人間ですから個人的な趣向やその日の感情に影響されることもあります。かといってディレクターの顔色を伺うようなアイディアしか出せないのでは、他社ともひと味違う斬新な切り口の企画は生まれません。  

 「絶対にイケル」と感じるアイディアならば上役や他の人とも意見を戦わせ、通 さなければいけません。「ヒラメイタ」と意気揚揚に持ってきたアイディアが簡単に否定されてしまうと、誰しも腹が立ち、逆上して意地になってやりこめようと思います。いい大人が立場権力や人脈を悪用してエゴで自分の意見を通 してしまうようなケースもあります。意見を戦わせるとは、こんなことではないのは当然です。

 自分では「最高だ!」と思っていても、過去沢山の競合社の作品や消費者の動向を見てきたディレクターの目には「なんでもなく、他社の作品と大差ない普通 のアイディア」と映る可能性もあります。そこで沸き立つ悔しさの感情は自制しなければいけません。沢山の人にメッセージを伝える広告を作る場合、人の意見にも真剣に耳を傾け、どんな相手にでも説得できるだけの理論で構築されていなければ、「ただの思いつき」と捉えられても仕方ありません。デザイナーが「なんとなくカッコイイから…」とか、ライターが「慣習的にこうしているので…」では、説得力に欠けます。素人の意見と大差ないです。

 意見をどうぶつければ相手が「うーん、なるほど」と唸るでしょうか?そのためには“目的を見誤らない”という事が大切です。一見とても簡単な事のように思えますが、実はここで躓いている人は多いのです。例えば、販促ツールの企画段階で「普通 の表現では、エンドユーザーは読まないでしょ?これなら目立つし、気になるので読みますよ!」「ターゲット層は、こういう事に興味を持つので、ネタとして仕掛けて引き付けるべきです。」というのは、いかにも正当な意見に聞こえます。

 部分的な視点では、「注意を引き付ける」という大切な役割を担うアイディアですから、良い意見です。では、なにを見誤っているのでしょう?上記意見を「入り口として…〜さらなる展開で、最終的にアクションを促す仕掛けとしては〜」と話がつながる人ならば、何も見誤っていません。逆に「興味を引く」から始まり「興味を引きました」で終わってしまっている意見の場合、根本的な目的「販促ツールの場合は、売り上げアップに貢献する」が完全に抜け落ちています。そんなアイディアは、いくらお金をつぎ込んでも売り上げに貢献できません。

 読みやすさや伝わりやすい表現など細かな基礎部分から、いかに注意や興味を引き、試したいという欲求に変化させ、アクションを促しやすくするか、この大ストーリーを演説できなければ負けなのです。小手先を変化させた表現テクニックだけでは持ちこたえる理論ではないのです。糸井重里さんは有名なライターですが、欽ちゃん球団のプランもストーリーを展開し、萩本さんは「なんか、「はいわかりました」って納得してしまうんだよね」とつぶやいていました。

 世の中には嫌みな性格であら探しばかりする人や否定的な捉え方しかしない人だっています。そんな人と当ったら、しっかりしたストーリーなしに、1コマの台詞程度のアイディア意見は、すぐに却下されてしまいます。 相手がどんな人でも、聞き終えて「うむ」というぐらい序幕から終幕まで、「問題点はないか?ミスマッチやつながりの不具合はないか?勘違いしていないか?」と自問自答しながら理論を組み立てなければいけません。喋り方にしても「例えばこういう事、つまり、わかりやすく言えば●●」と工夫が必要でしょう。

 クリエイティブとは感性の赴くままに、芸術肌的な活動に捉えられがちですが、ビジネスシーンで予算や時間、人員をつぎ込んで行う物は、まぎれもなく事業の一部です。業務を手がけるには、ゴールを見据えた計画表=綿密なプランを相手に伝えて、決済者の脳裏に成功の予測が立たないとゴーサインは出ません。クリエイティブも決して感性だけの商売ではないのです。プランニングにしても、安価なノウハウ本やセミナーで聞きかじった事を部分的に真似するものではないのです。広告や販促、WEBショップ等なら、いかに集客し、いかに購入してもらうか?雑誌ならいかにファンを増やし買ってもらう本になるか?商品の位 置から市場、ターゲット、商品特性、商戦を睨まない企画は説得力に欠けるという事です。

 表現者は浅い思いつきや、部分的に聞きかじったノウハウでなく、根本部分の勉強が常に沢山必要という事ですね。


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