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デザインは必要か?」
2視点で見たデザイン

(2005年10月19日執筆)
 
 今回は、デザインの必要性について考えていきたいと思います。とはいえ、デザインを真剣に追求していけば分厚い本が1册書けてしまいますので、「広告(及び様々なコミュニケーションツール)にデザインは本当に必要なのか?ということをデザイナーからの肯定的視点と、その逆の否定的視点から要点をつまむ形で追っていきます。

 まずデザインというのは、以前の特集で詳しく記しましたが、「見た目の格好よさ」のみの物では決してないです。例えば車を格好良いデザインだからと選ぶにしても、外観スタイルだけではなく、操作のしやすさ、乗り心地、安全性能、燃費や耐久性など様々な要素からデザイン設計されて成り立っています。

 逆に機能や使い勝手、わかりやすさ、読みやすさだけがあればデザインとして成立するのかと言えば、そうでもなく、感情に一時的に働く情動反応や、芸術性、美しさなど見た目の要素もターゲットの行動心理には大きく影響を与えているようです。2002年のスタンフォード大学の実施した調査では「信頼度の評価」に対する要因として「見た目のデザインの印象」が46.1%と半分に届く程ありました。

 もちろん信頼を与える要素としては、「社会的認知の高さ」や「受賞歴」、「国の省庁等の認可を受けている」といった物のほうが大きいでしょうが、信頼を構成する要因の一つとして精度の高いデザインレイアウトがあるというところでしようか?

 逆に精度の低い広告デザイン=(見た目が悪い)(整えられていない)(読みにくい、話がわかりにくい)(ミスマッチした印象)(誌面 が混乱している、ごちゃごちゃしている)などの失敗要因があると、信頼度や好感度は非常に低い評価になるのはいろいろな調査で判明しています。

 「要素をわかりやすく整え、印象づける、一目でわかる」デザインは、信頼や好感という感情面 からも必要性を感じます。しかし、世の中には「デザインされた印刷物は、世間に似たものが沢山流布されていて目に留めてもらえないのでは?」と考える人もいるようで、興味を引く為にデザインの統制を無視して、いろいろ変わった手法で目を引こうとするケースも見受けられます。

 しかし「いつもと違う表現」というのは従来の慣習に慣れたターゲットには「抵抗感」があるのも事実です。例えば、携帯電話でもキーボードでもWEBサイトのバナーボタンでも『ボタン』という表現ではありきたりで興味をひけないからと、新たに「ペンで手書きして次ページにすすめる」「声で動作する」などの新デザイン要素にした場合、最初はユーザーも「見慣れたものと勝手が違う」抵抗を感じていくのです。この抵抗は新製品が受ける洗礼なのですが、ユーザーにメリットが感じられるならば、いずれ慣れていき浸透します。あるいは楽しさなどがあっても浸透する可能性はあります。

 そのどちらもなく「目を引こうとただ変わった事をした」だけ、それが目的になってしまったケースでは、「使い慣れたもの」「見慣れたもの」と比較した抵抗感(場合により不愉快)しか残りません。そういった意味で新聞の紙面 や雑誌の割り付けなども定番の組み方があり、それが読み手の無意識の中にも抵抗なく読めるデザインとして成立しているのです。こういった慣習的要素とキャッチヴィジュアルのインパクトなど感情に訴える表現要素をうまく駆使して「正しく伝わる」(興味を引き、かつ整理されて分かりやすい)ことを目的に統制していったコミュニケーション方法、技法こそが、デザインの必要とされる由縁でしょう。

 では、次にデザイン不要論の視点から。確かに素人制作の格好わるいWEBページなどが、お金を払ってきれいにデザインしてもらったWEBページよりも高収益をあげているという事例もあります。多くの最終目的は高収益ですから、「だったらデザインなんて不要」という人もでてくるかもしれません。

 世の中に溢れているデザインの全てが必要性があるのかといえば、確かに意味を成していないものもあるでしょう。例えばWEBサイトのトップページに設置され、ロードに時間がかかるイメージのみのフラッシュムービーは、「具体的情報を得たい」というターゲットユーザーを待たせてまで提供する必要性があるかは疑問です。ロゴタイプなども凝りに凝った飾りだらけのデザインよりは、「覚えやすい簡単な作り」などの機能をもったシンプルなものの方が良いとされています。インターネット検索エンジンgoogleのページデザインも他のサイトにあるような多機能デザイン要素を省き、題字と検索窓だけというシンプルで効率的に使用できるようになっています。

 こういったシンプル イズ ベストという考え方は、その考え方事体がデザイン(設計)されているともいえます。逆に意味のない飾りや無駄 に時間やスペースを浪費してるデザイン要素は、間違いなく不要ということです。しかし、不要なものは削ぐとしても必要なコンテンツも素人作りで収益が高いというのはどういうことでしょうか?

   洗練され整理された見た目の印象が「感情」に良く訴える(良いサービスへの期待・信頼)のに対し、「理性」に訴えるものもあるのです。製品の特徴、例えば「健康卵油」の宣伝(WEBサイトでも新聞雑誌広告でも)で、トツトツのあまり上手でない文章だとしても、養鶏をはじめたきっかけから、土地づくりの何年もの苦労、良い餌を仕入れる為に色々試して行き着いたエピソード、その養鶏が産んだ卵の栄養成分、普通 の鶏卵との比較、祖母から教わった調理法、そして鳥インフルエンザに対する取り組み、企業姿勢等、沢山の情報を提供でき、読者はそれを理性的に「自分にとって良いか悪いか」、「信用できるかどうか」など考えて判断します。

 この場合、文章のみのメール配信のみでも事足りてしまうので、情報のしっかりとした裏づけやデータ、各スペックなど信頼に足るだけの内容と量 を提供する事で、見た目の体裁はよくなくても、内容で製品の必要性や信頼度を判断して購入に至っているわけです。そういう意味でデザイン不要でも業績があがるというケースがあるのです。

 ただし、エピソードなどの物語性のあるコンテンツは「理性」だけでなく「感情」に訴えている部分もありますし、購入判断も「理性」のみで考えて判断しているなら「衝動買い」「感動買い」なるものはあり得ない事になります。まして、ノンプロの方が、自分はデザインができないから、文章でオリジナリティをと頑張っても、「安さ爆発!」「なっとく価格、フムフム…」「後と言わず今すぐお電話…」など説得性に欠けた感情的な文章になっているのなら、デザイン面 でも感情に訴えた方が得策ですし、逆をいえば理性的な反応が得られる説得できるメッセージが送れないなら、感情面 (情動や楽しさ、美しさ)から攻めるべきです。その場合は視覚芸術をしっかりコントロールした誌面 と、素人作りのミスマッチでごちゃごちゃした誌面では、「パッと見」だけで優劣、善し悪しを決めつけられてしまい、信用にも影響をおよぼします。

 デザイン不要で高収益を上げているケースの場合、そういった「パッと見」の悪印象のデメリットを凌駕できる、納得でき信頼に足りる文章コンテンツがあるという事です。その文章コンテンツでもキチンと改行しボックス文字組を整理して構成すれば、読み手はさらに読みやすく、使いにくさや抵抗感が薄れる→無意識の内にも好感度へと意識が移行していく事になるでしょう。

 まとめとしては、「正しい情報を分かりやすく伝える」ために目的に合致した「良いデザイン」は、多くの事例からも必要性が感じられます。逆に「ムダの多い悪いデザイン」「なんとなく格好良いからといった安易な考えの悪デザイン」は不要という事です。そしてメッセージを伝えるのには、デザインだけでなく「コンテンツ(内容)」も十二分に大切という事、受け手に対して理性的説得ができる文章コンテンツ、図表等と、感情的アピールができるデザインとがあるという事ですね。どちらが欠けてもダメで、「分かりにくい」「ミスマッチ」など失敗したデザインはそのまま悪い印象で読者感情に響いいてしまうという事です。 結論として良いデザインは必要という事で如何なものでしょうか?


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