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「コピーライターって何者?」
(2005年1月24日執筆)
 
 今まで、広告に関するデザインに関しては多数分析してきましたが、文章「コピー」に関してはあまり触れてきませんでした。そもそもコピーライトって何なの?という人もいるでしょうから、簡単にコピーライターを紹介してみたいと思います。

 コピーライターのイメージといえば、万人に定着しているのが糸井重里さんでしょうか?各メディアに顔が売れている人ですから、多くの人が知るコピーライターでしょう。では、コピーライターってのは日刊のメルマガ配信していたり、渓流に行って釣りをしたり、テレビの審査員や欽ちゃん球団の事を書いていれば良いのかと言えば、それは全て副業や趣味に当たる部分です。広告屋は広告の文章、雑誌屋は雑誌の文章を構築出来てこそライターという職業といえます。糸井さんも本業と違う面 が目立ちますが、広告に関する姿勢は未だ鋭く捉えていますよ。

 日本は識字率も高いですから文章はほとんどの国民が書けます。故に、「広告の文章くらい、俺だって書けるよ!」と簡単に捉えてしまう人が出てくるのも仕方ない事でしょう。デザインという分野は、図画工作という特殊な分野で苦手とする人もいるので、「自分ではちょっと・・・」という傾向がありますが、文章となると、コストをけちって自分でまかなってしまおうという風潮も多いです。

 デジカメブームの昨今の、素人撮影と同じですね。素人撮影を全て否定はしませんが、『ただ被写 体を画像に写し撮っただけ』の写真と『欲しくなるように写 し撮る』のとでは、効果の違いも歴然です。良い写 真1枚でデザイン、コピーを省いても全てを物語る事が出来る場合もあります。ピカッと光るハイライトに焦点をあわせたブレスレットと、焦点が全体的にぼやけていて、反射光で白飛びしてしまっているブレスレットの写 真では、相手の受け止め方に決定的な差が付きます。文章も同じ事が言えるのですが、日常使う『言葉』というツールのためついつい軽視してしまいがちな人もいるようです。

 では、コピーライターはどの辺が優れているのか?文章を扱う職業というなら劇作家や作詞家など多数のプロがいますが、大まかにコピーライターとして分類すると広告系と出版系にわかれます。小説家とコピーライターは共通 する特長もありますが、根本的なところで違う部分もあります。その辺を追ってみましょう。

 広告のコピーライターは、ただキャッチコピーや新聞広告の文章を好き勝手に書いている訳ではありません。書くからには当然、書く目的と伝える相手が存在しています。広告の場合の目的は、商品を紹介する事だったり、セールで売る事だったり、わかりにくい仕組みをやさしく解説する事だったり、企業のメッセージの代役を務めます。

 「メッセージを伝える」となると、今までもさんざんこの話はしていますが、単に代弁する程度ではしっかりと伝わりません。キャッチコピーの役割、本文見出しの役割、本文をどの順序で展開するか、最後の極めの一句はどう展開するか?広告の設計図が描けなければ、「伝えようと頑張ったけど伝わらなかった、間違って伝わってしまった」となってしまいます。つまり広告ライターは、広告プランナーとしてしっかりアイディアや表現を組立、管理する能力、企画能力以外に統制・構成能力が必要なのです。

 キャッチコピーなら例えば、『この製造方法が丁寧かつ安全で素材の良さを100%活かせる凄いやり方なんですよ!』と開発者の人が熱弁したいとします。講演会で聴衆を前に熱く語るには良いですけど、駅貼りポスターのキャッチコピーでは、文章量 が多いと必然的に文字を大きく掲載出来なくなりますし、インパクトも訴求ポイントも絞れていないので、駅を早足で歩く人には振り向いて貰えないかも知れません。『生の声』の威力も確かにあるのですが、『良質の素材を正しい製法で』とか『○○(←素材名)をそのままに作りました』のような言い回しの方が、読者にはスッとわかりやすいものです。そしてプロのコピーライターはもっと「何?」と興味をそそる良い文章が書けます。「安全」や「丁寧」はこの場合、最初から言わず、ボディーコピー(本文)で説得していく材料にするという事ですね。

 言う事を絞る、興味を持たせるなど、文面 以前に『何に焦点を当てて、どう興味をひかすか』というプランが立てられないと務まりません。新聞広告や雑誌広告はキャッチコピーだけでなく、具体的な説得材料を展開させていきますので、キャッチ後の文章の設計力も必要です。出版ライターの場合も、見出しの付け方、テーマの見せ方など編集と打ち合わせして作ります。さらに取材ルポやインタビューなど現場への機動力も必要です。

 文章展開の組立だけ出来ればそれでコピーライターが務まるかといえば、そうも問屋が卸しません。もちろん基本中の基本、日本語の用法知識から、指定された文字数にピッタリと納める物書きの技術も必要です。指定された文字数とは、例えばタウンページの一行広告、webページのタイトルや宣伝文など、重要な20文字や80文字にどれだけのインパクトや有効な情報を与えられるか、デザイン上400文字の本文ブロックに説明を納めないといけない等、削ったり足したりの技術が不可欠です。

 物書きの技術は文章に携わる職業では必須ですから、作詞家なども音楽の音数に合わせたフレーズを厳選していきますが、違いはやはり詩のイメージの世界に誘うのか、商品に興味を惹かす為のフレーズをアピールするのかという目的の差が大きいですね。石田衣良のようなライター出身の文筆家もいますが、コピーライターでもエッセイは毛色が違って書きにくいという人もいます。しかし、小説でも話のつじつまが合わない文は失敗であるように、カタログのページをめくると話がバラバラになってるようではコピーライトとしても話の構成不足という事になります。こういう文章展開の構成力もコピーライター技術の範疇でしょう。

 小説家がテーマに対して徹底的に取材して沢山の知識を蓄えるように、コピーライターも沢山の情報収集から始まります。専門誌の雑誌ライターなら、かなりの通 の人でないと務まらないです。広告に関しても商品、業界、マーケット、競合他社、ターゲット層の嗜好、広告に関わる法律と沢山の情報を蓄積していないといけません。商品知識なら、開発者の人には劣るでしょうが、それでも沢山の資料を詰め込み、さらに違う視点から商品を見ます。違う視点とは単に外部の視点と言うだけでなく、鳥の視点、犬の視点とあらゆる角度から商品を切り刻む、そして、それこそが商品のアピールポイントを見つけだし、表現アイディアの源泉となるのです。

 まとめると、コピーライターは文章のプロであり、広告若しくは出版のプロで、開発者や営業マンとは違う視点をもつアイディアマンということになりますね。ちょっと高評価しすぎなのかもしれませんが、コピーライターの仕事というのが正しく認識されていない風潮もありますので、「ただキャッチコピーを書く人」という誤認から正しい理解を推進したいところなのです。


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