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「高級感を演出するテクニック」
何を伝える?

(2004年8月2日執筆)
 
今回は高級感についての話です。高級感テイストの演出セオリーを分析していきたいと思います。
 バブル崩壊以降、価格破壊も身近に感じる昨今ですが、「商品的に価値高い物だから値下げ競争はしない」という人もいると思います。周囲の競合製品がどんどんディスカウントする中で一体何を伝えればよいのでしょう?値段アピールがユーザーにとって低メリットになってしまうなら、「価値」や「夢」を伝えるべきです。

 「価値」とは、原材料が厳選されたり良質である価値、稀少品である価値、高い能力をもった職人のオーダーメイド品である価値、特別 な人のための特別な商品の価値、数々の受賞歴のある品の価値、年月を経て愛される価値。

 「夢」とは、高いステイタスを実現する夢、自分が商品を持つことでさらに素晴らしく見える夢、人より高いポジションに到達した満足感と誇りを示す夢。

 噛み砕いていけば、「純金99.9%使用」「幻の名品」「あなただけの〜」「プロ仕様」「100年支持されてきた実績」「高級腕時計が様になる男へ」「庭園に暮らす幸せ」等のアピールメッセージを発信することになります。『自分の商材も、見過ごしていたけれどよく考えたら価値高い物があった』という物が出てくるかも知れません。売り出し方を間違え、ディスカウント品のついでに一緒にアピールでは、良さを伝えきれず動かない商品になってしまうかも知れません。

 価値や夢を与える高級感の演出のデザインセオリーを3つあげてみます。見せ方ひとつで与える印象は変わります。

(1)高級な紙を選ぶ  紙が薄く裏側が透けるようなら「安物」と捉えられてしまいます。厚い紙の方が望ましいです。普通 のコート紙やマット紙以外にも、紙目の表情がある紙や筋目の入った紙等もありますし、PPというビニール加工で艶出しや艶消しなどもできます。パンフレットの場合、製本を図鑑のようなハードカバーにすれば、それだけで本の価値が高くなり、中綴じの店頭ラック置き販促パンフと比べても、簡単に捨てられることは抑止されます。

(2)イメージ重視の撮影をする  なんと言っても視覚からのイメージ、つまり写 真の持つ影響力は大きいです。高級イメージの商品演出ならメーカー提供カタログから抜粋して商品を掲載ということをしていては、なかなか上手くできません。やはり撮影セットとフォトグラファーの技術に頼った方が賢いです。暗がりの影部分は濃いダークな中にもうっすら陰影のトーンが垣間見えたり、金属のピカッと光るハイライトの立て方、遠景ぼけ、そして演出用の布やバック背景やロケーション現場などが与える材質感だったり、洒落た雰囲気は商品のイメージアップの強力な助っ人になります。

(3)ゆったりと空間に余裕のある洗練されたレイアウトと文字情報などは小さく最小限に  シャネルやディオールなどの広告を見ればわかると思いますが、不必要に要素を沢山盛り込んでいません。ロゴのみの場合だってあります。もちろんブランドとして確立しているからこそ出来ることですが、洒落た繊細なロゴタイプひとつとムードのある写 真一枚。絵はがきやポスターのように飾っておきたいと思いませんか?ユーザーが「飾りたい」と思うことが、お洒落だったり格好良いだったりのイメージ(=夢)を与える事に成功しているのです。足し算よりは引き算、無駄 を極力削ぎ落とした磨き込んだデザインフォルムだから、人に『愛着』や『憧れ』を与えられるのです。あれこれ、宣伝文句や構成要素が多くなると、どんなに頑張っても飾っておきたいポスターと言うより案内ビラになってしまうのは否めません。ショッピングバックやパッケージのデザインも然りです。

 上の3項目は基本的なセオリーですので、そこから、各クリエイターがどう料理するか、腕比べになります。クリエイターとしては、こういったイメージ造り、格好良さやお洒落な物を演出していく事は冥利につきる事です。誰もがやりたいと思う仕事です。だからといって、安直に頼むよりしっかりと実力を見極めた方が安全です。どれだけイメージ構成力があり、撮影後のイメージをどこまで事前に把握できているか?、撮影で上手くいかなかった箇所をどれだけCG加工でフォローできるか?紙や印刷のインクのノリ具合までしっかり計算できているか?等々。

 一見簡単な構成のようで実は難易度の高い仕事です。華のある仕事だけに、やりたいばかりに過剰な営業やアピールをしてしまうクリエイターが多いのも、こういった仕事の特長です。(そして、高級感の制作業務は、食材・料理人からして良い物を使う原理で値段も大概高額になります)  さて、イメージ写真だけでは、商品が説明できないでしょう。かといってデカデカと赤いプレートや枠囲みのデザインに「限定生産」とか「純度100%の逸品」と太文字で入れてしまっては品位 を損なってしまいます。損なわない程度のアピールに抑え、一番に「飾りたい」と思わせるイメージや、物語のように読みふけるコピーを優先する方がトータルのイメージ戦略では有効です。

 「限定生産」のデカデカした四文字より、深みや影がある職人の眼差しのモノクローム写 真に、何十年に及ぶ開発と失敗の繰り返しから誕生した秘話物語を読ませ、さりげなく最後に「限定」を臭わす事で、「こんな良い品が・・」と思わせるのがコツです。たいした品でなければ限定販売されても、特に欲しいと思わないでしょう。憧れてしまえばこちらのもの!好きな異性を落とすのに、ひたすら喋りまくるより、黙っていても格好良さや美しさが伝わり、勝手に相手が好意を抱いてしまう。もてる人の必殺技ですね。


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