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「開発者の起こしやすい問題点」
親バカ視点を改善する!

(2004年7月19日執筆)


 今回は、広告などのアプローチ(ユーザーへの近寄り方)の上で、陥りやすい問題について解説したいと思います。特に開発者の人などが陥る視点のズレに関してです。

 例題ケースです。ある開発者さんは、日夜「家族が健康に暮らせ、長持ちできる住宅」の開発に明け暮れていました。従来の住宅工法などを様々な視点から研究し、失敗と苦労を積み重ね、断熱材で壁の外から家ごと魔法瓶のようにすっぽりと覆ってしまう「外断熱工法」という新しい工法を開発しました。「うぉぉ!やったぞぉぉっ」

 これなら、家の中の温度を常に一定に保て、従来工法の問題点である「壁体内結露」というものを解消できるそうです。他社が従来工法で壁の隙間から外気が入ったり、室内の空気が逃げたりといった事で手を焼いていた時に、先んじて家ごと魔法瓶のようにくるむ新工法を開発できたので大喜びです。「これは、我が社の切り札になるぞ!」「凄い開発をしてしまった!」「他社に真似される前に発表しないと」社員はみんな興奮しています。

----上記は、今では日本でもブームになっている「外断熱工法」を仮にある人が開発した例としていますが、自社が先駆けて開発した時の興奮とは、計り知れない物があるでしょう。しかし、ここからが問題の始まりです。

 新工法を一日でも早く発表して、他社を出し抜きたいと社長さんは、開発者に広告や広報を一斉に発信するように命じました。開発者さんも、喜び勇んで自分の情熱の全てを注ぐべく次のような原稿を作りました。

『業界初です!凄い!外断熱の家!「壁体内結露」を発生させない工法を開発!室内の温度を一定に保つ事が可能になった!モデルハウス内見会はこちらまで・・・』

 しかし、ユーザーの反応が今ひとつでした。開発者さんは、「なぜこんな凄い事がわからないんだ!」と腹が立ってきました。

----これが、開発者のような思い入れの強い人が陥りやすい「親バカ」に似た視点ですね。 苦労を重ね、技術とアイディアの結晶として産まれた製品ですから、自分は製品の全て理解している上に、可愛くて仕方がないのです。言いふらしたいのです!『私の製品は、こんなに凄いんだ』と・・・・。両親が手塩に掛けて育ている可愛い子供が頑張ったら、「ウチの子は凄い!天才になるかも」という心理です。

 広告として製品の良い部分をアピールするのは大切です。しかし、『相手に教える・伝える』事と『自分ひとりで演説をする事』の違いをわからなければいけません。上の開発者さんの場合は、自分の思い入れが強すぎ、内容も難しい専門知識をそのままに、一人盲目になってしまったケースです。

 『「壁体内結露」を発生させない工法を開発!』・・・開発者にすれば、「どーだ!これは画期的たぞ!」とアピールしたいのでしょうが、巷のおばさんは、『それって便利なの?お得なの?安いの?高いの?私がそこに住むと、どれくらいメリットあるの?ちょっと、お父さん「壁体内結露」ってしってる?』といったところでしょうか。当然新商品なら、丁寧な解説も必要ですから(壁体内結露とは、室内から出た暖かい水蒸気を含んだ空気が、壁の間などを通 りぬける時、冬の冷たい外気で冷やされ、壁の中に結露として残ってしまう事で、その結露が原因で柱などの躯体が腐ったり、湿気からカビ、ダニを発生させる原因になったりします。)という説明も必要です。

 それよりも問題は、「新工法を開発した!」という事をアピールしてしまっているのです。発した側からは「凄いんです、初です!他社ではやってません!」と自慢気に発表したいところでしょうが、情報の受け手からすれば、「はい、それは私に関係ありますか?関係ある場合、どこがどう違って、私にメリットがあるんでしょうか?」ということを知りたいわけで、煽りや勢いよりも「自分にとって益があるか?」という事を冷静に判断しようとしています。

 視点がずれてしまってギャップが生じてしまったケースですね。他の例では「この製品は材質に○○を採用しています!!凄いでしょう!」「はい、それでどうなるんですか?良いのですか?高くなるんですか?」といった場合も同じです。

  『話題の新しい住宅(外断熱工法)を是非体験してください!
(ここが違う=その1)省エネ住宅、家庭の冷暖房費を従来の●%カット!  
(ここが違う=その2)健康住宅、カビやダニの発生率を抑えました!
(ここが違う=その3)保温住宅、各部屋の温度差がなくなり、どこに移動しても快適です!  
(ここが違う=その4)長持ち住宅、構造体を湿気から守り、家の耐久性と資産価値をアップ!   
この外断熱の住宅は、○○社でしか体験できません。受付人数に限りがありますので、お早めに!

 ユーザーが、どうメリットを得られるのか、相手の視点になって考えることが大切です。「我が社のココが凄い」と「貴方に凄く良い物を我が社から」の違いですね。(他社では無い物)なら、(その希少価値を貴方に)と伝えてあげるのです。販売業で例えれば、「私が売りたい良い商品」と「貴方に使って欲しい良い商品」の違いです。自分に重心を置いてしまうと、その分相手の得られるメリットが減ってしまい、反応が鈍くなります。

 情熱を持って、勢いをつけてアピールするのは良いことですが、肝心のユーザーさんを喜ばしてあげることを忘れてしまっては、情熱の空回りでもったいないことです。「おばちゃん、これいいよ」「おっちゃん、あんたにピッタリの良い物があるんですよ!」と、自分のアピール欲は、ひとまず置いて、客観的に確認するのが良いでしょう。

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